書評

嫌われる勇気の要約と感想|岸見一郎・古賀史健の書評

書評
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岸見一郎さんと古賀史健さんの著書である嫌われる勇気の要約まとめと個人的な感想をお伝えしていきます。ずばり嫌われる勇気を一言で表すと「嫌われる勇気を持ち、自分の人生を生きる」です。

 

働いている人がほとんどかと思いますが、仕事をする上で人と関わることがほとんどです。そのため、相手に嫌われないようにしようという思いから、相手のことばかりを考えてしまい、自分を押し殺しながら働いている人も多いでしょう。

しかし全員から好かれようとすると、ビジネスが思い通りに進まなかったり、逆に誰からも好かれないという状態にもなりかねません。生きていく上で自分と合わない人は少なからず存在しますし、ビジネスにおいては人と仲良くやるのも重要なのですが、結果を出すことも重要です。

 

同僚と良い関係を結ぶながら結果を出していくというハードルの高い人生ではありますが、自分の人生を生きるという点からも他者の評価を気にしすぎずに、自分という軸を持ちながら生きることで楽しい人生に変わるでしょう。

 

嫌われる勇気はこんな方にオススメ

  • 人間関係に悩んでいる人
  • 幸福について考えている人

嫌われる勇気の概要

出版日ページ数読了に必要な時間数
2013年12月12294ページ3時間

嫌われる勇気の要約

本書では、幸福に生きるための考え方を、哲人と青年の2人が対話形式で議論していきます。

アドラー心理学を用いて「幸福」や「人の悩み」について深く話していくため、「幸福について考えている人」や「人間関係に悩んでいる人」にとって、問題解決の一助となる1冊になるでしょう。

嫌われる勇気の著者プロフィール

岸見一郎(きしみ いちろう):哲学者。
京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門の哲学(西洋古代哲学、特にプラトン哲学)と並行して、1989年からアドラー心理学を研究。精力的にアドラー心理学や古代哲学の執筆・講演活動、そして精神科医院などで多くの青年のカウンセリングを行う。日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。
古賀史健(こがふみたけ):フリーランスライター。
書籍のライティング(聞き書きスタイルの執筆)を専門とし、ビジネス書やノンフィクションで数多くのベストセラーを手掛ける。臨場感とリズム感あふれるインタビュー原稿にも定評があり、インタビュー集『16歳の教科書』シリーズは累計70万部を突破。20代の終わりにアドラー心理学と出会い、常識を覆すその思想に衝撃を受ける。

嫌われる勇気の書籍目次

  1. トラウマを否定せよ
  2. すべての悩みは対人関係
  3. 他者の課題を切り捨てる
  4. 世界の中心はどこにあるか
  5. 「いま、ここ」を真剣に生きる

人は勇気があれば変われる

人はトラウマの1つや2つを持っているものです。

「学校や職場でいじめにあったため、外に出ることができなくなった」
「太っているから、好きな人に告白できない」

このように「○○だから○○できない」などと、トラウマを言い訳にして生きている人がいます。アドラー心理学では、原因論ではなく目的論の立場をとり、トラウマを明確に否定しています。

原因論とは「過去の出来事が、現在の状況を作っている」といった考え方です。一方、目的論とは、「現在の状況には原因などなく、あるのは目的だけ」といった考え方です。

例えば、過去に両親から虐待を受け、対人関係が不安で引きこもりになってしまったAさんがいるとします。

原因論の立場をとると、Aさんは「過去に両親から虐待を受けたため、対人関係が不安で引きこもりになってしまった」ということになります。

一方、目的論の立場をとると、本書では次のように述べています。

「外に出たくないから、不安という感情をつくり出している」
つまり「外に出ない」という目的が先にあって、その目的を達成する手段として、不安や恐怖といった感情をこしらえているのです。

※引用:第1夜 トラウマを否定せよ

私は、本書で目的論の例を見た時、「これではAさんが、引きこもりを自ら選んだみたいだな」と感じて、あまり納得できませんでした。しかし本書を読み進めていくうちに、目的論の考え方に共感していきました。

引きこもりのAさんの場合、「外に出ない」という目的の裏には、次のような気持ちが隠れている場合があります。

外に出ることなく、ずっと自室に引きこもっていれば、親が心配する。親の注目を一身に集めることができる。
まるで腫れ物に触るように、丁重に扱ってくれる。

※引用:第1夜 トラウマを否定せよ

つまり、Aさんの場合、親にかまってほしいという気持ちがあり、引きこもりという道を選択したのです。

他にも、太っているから告白できないという人は、恋愛が怖いため告白をしない選択をし、年齢のせいで行動できないという人は、現状維持をしたいため行動しない選択をしていることが考えられます。

もし原因論が正しいとするのであれば、過去に親から虐待を受けている人は、全員引きこもりになっているでしょう。

つまり過去の出来事により、未来は決定づけられてしまうことになってしまうのです。しかし、私たちは勇気を持って、原因論を否定することで、自分自身の行動を変えることができます。

太っていても告白はできるし、過去に虐待を受けていても外に出ることはできます。

アドラー心理学の目的論は、一見すると残酷に見えますが、勇気を持つことで人は変われるという希望に満ち溢れた考え方です。「○○だから○○できない」の「○○だから」を、勇気を持って断ち切ることで、自分を変えていけるのです。

幸せになるには「嫌われる勇気」が必要

人は誰しも、「他者から認められたい」という承認欲求があります。しかしアドラー心理学では、この「承認欲求」を否定しています。

本書では、「承認欲求」を否定するにあたって、次のように言及しています。

われわれは「他者の期待を満たすために生きているのではない」

※引用:第3夜 他者の課題を切り捨てる

この一文を読んだ時、私は今まで他人の人生を生きていたことに気がつきました。

私は進路や就職については、親に心配をかけないように、親が勧めてきたレールに沿って進み、仕事においても他者の評価ばかりを気にして行動していたのです。

そのことに気づいてからは、アドラー心理学の考え方である「課題の分離」を意識して、自分の人生を生きるようになりました。「課題の分離」とは、次の通りです。

「これは誰の課題なのか?」という視点から、自分の課題と他者の課題とを分離していくこと

※引用:第3夜 他者の課題を切り捨てる

例えば、一生独身のままで過ごしていきたいAさんがいるとします。

しかし、親からは早く結婚しなさいとうるさく言われ、親子で対立してしまいます。この時、「課題の分離」で考えると、結婚するかどうかは、Aさんの課題であって、親の課題ではないと言えます。

つまり、自分の課題と他者の課題を分離できず、他者の課題に踏み込んでしまうことで、対人関係のトラブルが生まれてしまうのです。
(ここでは、Aさんの結婚か独身かという選択についての課題に親が介入することでトラブルが生じてしまっています)

誰の課題かを見分ける方法は、本書では、次のとおり説明しています。

「その選択によってもたらされる結末を最終的に引き受けるのは誰か?」

※引用:第3夜 他者の課題を切り捨てる

この「課題の分離」の考えを自分の中に取り入れるようになってからは、人間関係が非常に楽になり、自分の人生を生きている感覚が以前より増しました。

職場においても、以前は相手の反応を気にして自分の意見を言えずにいましたが、意見を言うことは「自分の課題」、自分の意見を聞いてどう思うかは「相手の課題」と分離することで、他者の評価は気にならなくなったのです。

「自分の意見を主張し、拒否されるのであれば、それは相手の課題だから仕方のないことだ」と割り切ることができるようになりました。「課題の分離」を意識し、自分の人生を生きるということは、他者の評価を気にしない「嫌われる勇気」を持つことです。逆に「嫌われる勇気」がなければ、いつまでも自分の人生を生きることはできません。

なかなか承認欲求を捨てることは難しいですが、他者の言動に振り回されたくないという人は「嫌われる勇気」を持って、自分の人生を歩んでいきましょう。

「いま、ここ」を生きる

私たちは、過去に囚われたり、未来を心配しすぎたりしてしまうため、行動できないことがあります。それはアドラー心理学で言えば、「いま、ここ」を真剣に生きていないということになります。

私は「お金に余裕ができたら、行動しよう」、「時間に余裕ができたら、行動しよう」といったように、よく先延ばしにする癖がありました。そのように考えたことは、結局行動せずに終わりました。

私は過去や未来のことばかりを考え、「いま」については真剣に向き合えてなかったのです。本書では、「いま」を生きないことを次のように表現しています。

人生における最大の嘘、それは「いま、ここ」を生きないこと

※引用:第5夜 「いま、ここ」を真剣に生きる

人生を幸福に歩んでいくために「いま、ここ」を大切にしていきませんか?

嫌われる勇気の要約と感想のまとめ

本書を読み終え、私は「他人の人生を生きていた」という事実に気づかされました。
特に仕事においては、いつもどこかモヤモヤしていたものを感じており、その理由は他者の評価を気にしすぎていたからなのです。
本書は具体的なノウハウ本ではありませんが、「課題の分離」や「目的論」などの考え方を示しており、自分の背中を押してくれる1冊となりました。

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